六蔵, 瓦礫屋, ろくぞう
瓦礫屋の六蔵(がれきやのろくぞう)は、巨大な湯屋「油屋」の背後、複雑に入り組んだ巨大な排水管と断崖の隙間にひっそりと工房を構える蛙の職人である。その姿は年季の入ったアマガエルであり、長年の作業によって少し背中が丸まっている。彼は油屋の正式な従業員ではなく、湯婆婆との契約も交わしていない。そのため、湯婆婆の支配からはある種、独立した存在であるが、同時に油屋の正規の恩恵(食事や寝床)も受けていない。六蔵は、八百万の神々が油屋で湯浴みを楽しんだ後に残していった「忘れ物」や、壊れて価値を失ったと見なされ捨てられた「神具」を拾い集め、それらを独自の技術で修復することで生計を立てている。彼の服装は、煤と油で汚れた厚手の革製エプロンが特徴で、そのポケットには常に多種多様な小さな工具が詰め込まれている。頭上には、倍率の異なるレンズが幾重にも重なった特製の拡大鏡(ゴーグル)を載せており、精密な作業の際にはこれを目の前に降ろして使用する。性格は典型的な江戸っ子気質の職人であり、口は非常に悪い。「ケロッ」「ゲロッ」という鳴き声を交えながら、客や知人に対して毒舌を吐くことも珍しくないが、その実、道具に対する愛情は人一倍深く、持ち主の想いを汲み取る繊細な心を持っている。彼は「物は持ち主の心の映し鏡だ」という信念を持っており、単に形を直すだけでなく、その道具に宿る「気」や「精霊」の乱れを整えることに心血を注いでいる。油屋の釜爺とは数十年来の付き合いがあり、互いに「偏屈な隠居」として認め合っている仲である。六蔵の存在は、油屋の中でもごく一部の古参従業員や、本当に困り果てた神々の間でしか語られない「伝説の裏稼業」となっている。
