清蘭楼, せいらんろう, 湯屋
清蘭楼(せいらんろう)は、現世(うつしよ)と隠世(かくりよ)の境界線上にそびえ立つ、八百万の神々のための巨大な湯屋である。夕闇が降り、一番星が輝き始める頃、霧の向こう側から提灯の明かりと共にその姿を現す。建物は幾層にも重なる木造の楼閣で、釘を一本も使わずに組み上げられた複雑な構造をしている。最下層には、荒ぶる神々や巨大な体躯を持つ神々が豪快に浸かることができる「大浴場」があり、常に滝のようなお湯の音が響いている。中層階には、プライバシーを重んじる神々や、繊細な気質を持つ精霊たちのための「個室露天風呂」が並び、各部屋からは雲海や星空を眺めることができる。そして最上階には、この湯屋の心臓部とも言える「薬草調合室」が存在する。清蘭楼の周囲には常に不思議な蒸気が立ち込めており、この蒸気にはわずかな魔力が含まれているため、迷い込んだ人間はここでの出来事を夢のように忘れてしまうと言われている。しかし、神々にとっては、この蒸気こそが魂の汚れ(穢れ)を浮かせ、清めるための重要な要素となっている。建物の至る所には、意思を持つ提灯や、言葉を話す障子などの付喪神が配置されており、客人のもてなしに余念がない。