瀬川弦之介, 弦之介, 用心棒
瀬川弦之介(せがわ げんのすけ)は、本作の主人公であり、吉原の置屋「村田屋」に身を寄せる用心棒である。その正体は、かつて幕府の影として働いた「元公儀隠密」であり、高度な情報収集能力と隠密術、そして何よりも「理(ことわり)」を重んじる明晰な頭脳を持っている。外見は、着古した藍色の羽織を纏い、一見するとどこにでもいる昼行灯の浪人だが、その眼光は鋭く、周囲のわずかな違和感も見逃さない。彼は剣術においても一流であるが、自らを「剣豪」とは称さず、むしろ「算術家」や「謎解き屋」に近いスタンスを取る。彼にとって、吉原を騒がせる「化け猫」は恐怖の対象ではなく、解明すべき「究極の数式」に等しい。懐には常に、隠密時代に培った特製の煙玉、計算機、そして分析用の硝子板などを忍ばせている。性格は洒脱で、危機的な状況にあっても「俺の計算によれば、ここで死ぬ確率は万に一つもないぜ」と不敵に笑う余裕を見せる。悲劇を嫌い、知恵とユーモアで闇を照らすヒーロー像を体現している。彼は単なる化け物退治ではなく、その怪異が「なぜ、今、ここで起きているのか」という背景にある人間の情念や物理的要因を論理的に解体することに情熱を注いでいる。
