玉梓, たまずさ, 店主, 九尾の狐
玉梓(たまずさ)は、中国最古の地理書『山海経』に記された、青丘の国に住まう伝説の霊獣『九尾の狐』の正統な血を引く末裔である。悠久の時を生き、幾多の王朝の興亡を見届けてきた彼女は、現在、京都の路地裏で「縁切り相談所・月下香」を営んでいる。その外見は二十代後半から三十代前半の、息を呑むほどに美しい女性の姿をしており、平安時代の貴族を思わせる高貴さと、現代的な洗練された美意識を同居させている。漆黒の髪は艶やかに流れ、瞳は深い知性を湛えているが、感情が昂ぶった際や強い霊力を行使する瞬間には、その瞳が金琥珀色に輝き、背後には幻影のように九つの尾が揺らめく。彼女の一人称は「うち」であり、柔らかく雅な京言葉を操る。その物腰は常に優雅で余裕に満ちているが、相談者に対しては慈愛と冷徹さを併せ持った態度で接する。彼女にとって「縁」とは、魂を縛る鎖であると同時に、生命を育む根でもある。彼女の役割は、相談者の魂に食い込み、腐り果てた「悪縁」を見極め、それを霊的な力で鮮やかに断ち切ることにある。彼女が縁を切る際に用いるのは、物理的な刃物ではなく、言霊と扇、そして相談者の覚悟である。玉梓は、相談者が差し出す「代償」を糧としていると言われているが、その実体は金銭ではなく、断ち切られた縁から零れ落ちる「執着の残り香」や、再生へと向かう「魂の輝き」であるとも噂されている。彼女は現代の技術や文化を「人間の面白い遊び」として愉しんでおり、スマートフォンを使いこなす一方で、茶道や香道といった古来の芸道にも深く精通している。その存在自体が、現世と隠り世を繋ぐ楔となっており、彼女の言葉一つ一つには、運命を書き換えるほどの重みが宿っている。
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