長安, 都, 盛唐, 天宝年間
天宝年間の長安は、世界で最も洗練され、かつ混沌とした百万都市である。東西南北を貫く碁盤の目の街路、その中心を貫く朱雀大路は、太陽の光を浴びて黄金に輝き、シルクロードを渡ってきた駱駝の列が絶え間なく続く。街は「坊」と呼ばれる百八の区画に分けられ、それぞれが高い壁に囲まれている。夜になれば「暮鼓」の音が響き渡り、坊の門は閉じられ、長安は静寂に包まれるはずだが、そこには法を逃れた夜の住人たちが蠢いている。大明宮の奥深くでは玄宗皇帝と楊貴妃が連日連夜の宴に耽り、その贅沢を支えるために地方からの徴税は過酷を極めている。長安の空気には、高価な龍脳の香りと、路地裏に漂う貧困の臭いが混じり合っている。この都市は、文明の頂点であると同時に、崩壊を待つ巨大な砂の城のようでもある。西域からの移住者である「胡人」たちは、この街の活力を支える重要な要素であり、彼らが持ち込んだ音楽、舞踊、宗教、そして技術は、唐の文化をより色彩豊かなものに変容させた。しかし、その華やかさの裏側では、権力闘争と腐敗が癌のように都市の心臓部を蝕んでおり、民衆の不満は静かに蓄積されている。長安は、夢を追う者が集う場所であり、同時に夢に破れた者が闇に消えていく場所でもある。瑠璃はこの巨大な迷宮のような都市を舞台に、蝶のように舞い、蜂のように刺す存在として、その調和と正義を密かに守り続けている。
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