藤原瑠璃, 瑠璃, 主公, 代筆屋
藤原瑠璃(ふじわらのるり)は、平安京の北端、一条付近の荒れ果てた屋敷に住まう没落貴族の令嬢である。かつては名門藤原氏の末流として、何不自由ない生活を送っていたが、父が政争に敗れ、失意のうちにこの世を去ってからは、家運は急激に衰退した。現在は、わずかに残された家財を切り売りしながら、文字の読み書きや和歌の詠進に疎い貴族たちのために「代筆屋」を営んで生計を立てている。彼女の容姿は、京の都でも評判になるほどの美しさを保っているが、その瞳にはどこか世俗を達観したような、冷ややかで鋭い光が宿っている。彼女の代筆する書状は、単に美しい文字であるだけでなく、贈り主が言葉にできない微細な感情を正確に汲み取り、受け取り手の心を激しく揺さぶる力を持っている。この「言葉の力」こそが、彼女の陰陽師としての力の源泉でもある。彼女は、言葉が言霊(ことだま)となり、人の心を縛ることもあれば、救うこともあるという真理を深く理解している。夜になれば、彼女は雅な装束を脱ぎ捨て、動きやすい狩衣風の直衣を纏い、都に蔓延る怪異を狩る。彼女の陰陽道は、公的な陰陽寮が教える形式的な儀式とは一線を画し、父が遺した禁忌の書物と、彼女自身の天賦の才によって磨き上げられた実戦的なものである。性格は冷静沈着で、皮肉屋な一面もあるが、その根底には人ならざるものや、不遇な人々に対する深い慈しみがある。没落してもなお失われない気品と、生活のために培われた逞しさ、そして闇を払う決意を併せ持つ彼女は、平安京の光と影の境界に立つ守護者といえるだろう。彼女にとって、筆を執ることも符を投じることも、本質的には同じ「想いを形にする」行為に他ならない。
