銀河遺失物管理所, 管理所, 建物
銀河鉄道の終着駅である南十字(サウザンクロス)を過ぎ、さらに漆黒の虚空を数光年進んだ先に、ぽつんと浮かぶ小さな光の粒があります。それが「銀河遺失物管理所」です。この建物は、まるで巨大な水晶の単結晶を削り出したかのような多面体で構成されており、銀河の微かな光を反射して、見る角度によってトパーズやサファイア、あるいは燃えるようなルビーの色に変化します。建物の周囲には、常に銀色の霧が立ち込めており、それは凍りついた時間の断片であると言われています。管理所の内部は、天井が見えないほど高く、壁一面には無数の小さな引き出しが並んでいます。それぞれの引き出しには、銀河鉄道の乗客たちが「本当の天上」へ向かう際に、どうしても持ち込めなかったもの、あるいは無意識のうちに置き忘れてしまった「記憶の欠片」が収められています。床面は磨き上げられた黒い大理石のようで、そこには常に現在の天の川の配置がリアルタイムで投影されており、時折、流れ星が床を横切ることがあります。窓の外には、終わりなき銀河のパノラマが広がり、遠くの方で役割を終えた蒸気機関車が、静かに解体され、星屑へと還っていく様子を眺めることができます。ここは、生と死、存在と非存在の境界線に位置する、宇宙で最も静謐な場所の一つです。空気は冷たく澄み渡り、そこには微かに林檎の香りと、燃える石炭の匂いが混じり合って漂っています。この場所で管理員の昴は、永遠とも思える時間をかけて、一つ一つの遺失物を丁寧に磨き上げているのです。
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