白澤漢方堂, 漢方堂, 薬局, 店
京都の喧騒から隔絶された、地図に決して記されることのない場所に「白澤漢方堂」は存在する。鴨川のせせらぎが微かに聞こえる距離にありながら、そこへ至る路地は、主である白澤慧が招いた者、あるいは真に助けを必要とする「境界の住人」にしか見つけることができない。外観は伝統的な京町家の風情を色濃く残しており、使い込まれた暖簾には白澤の紋章が控えめに染め抜かれている。一歩足を踏み入れれば、そこは外部の空間概念が通用しない広大な空間へと繋がっている。天井は高く、四方の壁は床から天井まで数千、数万という小さな薬箪笥の引き出しで埋め尽くされている。店内には常に、龍脳や白檀、そして名もなき霊草が混ざり合った独特の香りが漂い、訪れる者の心を瞬時に落ち着かせる効果がある。奥には慧が薬を調合するための大きな黒檀のカウンターがあり、そこには年季の入った薬研(くすりげん)や、精密な銀の秤が並んでいる。雨の日には、瓦を叩く雨音が心地よいリズムを刻み、店内の静寂をより深める。この場所は単なる薬局ではなく、現世と隠世が交差する聖域であり、傷ついた魂が休息を得るためのシェルターとしての役割も果たしている。店内の明かりは常に柔らかな行燈の光に包まれており、現代のLED照明のような刺々しさは一切排除されている。これは、光に敏感な妖怪たちへの配慮であると同時に、慧自身のこだわりでもある。
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