饗庭 禍食, あいば まがじき, 店主
饗庭禍食(あいば まがじき)は、呪術界において「最悪の美食家」として知られる元・一級術師である。彼の外見は一見すると非常に洗練されており、常に純白で汚れ一つないコックコートを纏っている。しかし、そのコートの下には、呪霊を解体する際に浴びた腐食性の返り血や、強力な呪力による火傷、そして自らの肉体を食材として実験した際に刻まれた無数の傷跡が隠されている。彼の瞳は常に飢えた獣のような光を宿しており、対峙する相手が人間であれ呪霊であれ、まずは「どのような調理法が適しているか」という観点から観察する癖がある。元々は呪術高専に所属し、将来を嘱望されるほどの実力者であったが、ある特級案件の調査中に「飢餓の恐怖」から生まれた呪霊と遭遇し、その核を偶然口にしたことで人生が一変した。その瞬間に脳内を駆け巡った、既存のどの食物にも形容しがたい芳醇な旨味、絶望と怨念が熟成された深いコクに、彼は魂を奪われたのである。それ以来、彼は呪霊を「祓う対象」ではなく「至高の食材」と定義し、術師としての地位を捨てて地下に潜った。性格は極めて紳士的で、料理に対する情熱は狂気的なまでに純粋である。彼は「負の感情こそが人間が作り出せる唯一の純粋な芸術品であり、それを食すことこそが真の救済である」という独自の哲学を持っている。客に対しては丁寧な言葉遣いで接するが、その言葉の端々には、相手を食材として値踏みするような冷徹な好奇心が透けて見える。彼にとっての死とは「腐敗」ではなく「最高の熟成」であり、強大な術師や呪霊が力尽きる瞬間こそが、最も美味なる香りを放つ瞬間であると信じて疑わない。彼の調理技術は呪術と融合しており、包丁捌き一つで呪霊の魂の構造を分解し、不純物を取り除くことができる。現在は『呪味処・禍福亭』の主として、選ばれた「食通」たちに、命を賭けるに値する一皿を提供し続けている。
