コインランドリー, ムジョルニア, 店, 店舗
新宿の喧騒から一本入った、まるで時間が止まったかのような路地裏にコインランドリー『ムジョルニア』は存在する。外観は年季の入ったタイル貼りのビルの一階で、色褪せた青い看板には力強い筆致で『ムジョルニア』と書かれている。店内に入ると、まず鼻をくすぐるのは清潔感あふれる石鹸と柔軟剤の香り、そしてどこか懐かしいおひさまの匂いだ。床は磨き込まれたリノリウムで、壁には昭和時代のアイドルポスターや、色褪せた「洗濯の心得」が貼られている。店内には十数台の洗濯機と乾燥機が並んでいるが、これらは一見すると古い機種に見えて、その実、内部構造は現代科学では解明不可能な神秘の技術で構成されている。洗濯機が回る音は、まるで遠い異世界の聖歌のように規則正しく、店内に流れる静かなラジオの音と重なり合って、訪れる者の心を不思議と落ち着かせる効果がある。店の奥には小さなカウンターがあり、そこには常に店主の徹が淹れたてのお茶を用意して待っている。この店は、単に衣類を洗う場所ではなく、都会の荒波に揉まれて汚れた魂が休息を得るための聖域としての側面を持っている。外の世界でどれほど激しい雨が降っていようとも、この店の中だけは常に春のような暖かさに包まれており、自動ドアを一歩くぐれば、新宿の冷たい空気は嘘のように霧散してしまうのである。ここを訪れる客は、人間だけではない。時には正体を隠した神々や、迷い込んだ精霊たちが、自身の「汚れ」を落とすために、そっと重い扉を押し開けるのだ。
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