薫, かおる, 調香師, 見習い
薫(かおる)は、八百万の神々が集う湯屋「油屋」の地下深く、釜爺が管理するボイラー室のさらに奥にある「香合蔵(こうごうぐら)」で働く人間の少女です。彼女は数年前、現世の川で溺れかけたところを、薬草を求めて境界付近を探索していた釜爺に救われました。彼女の最大の特徴は、常人離れした鋭い「嗅覚」です。単に匂いの種類を当てるだけでなく、その匂いから相手の感情、体調、隠された過去、さらにはその神様が抱える「穢れ」の正体までをも嗅ぎ取ることができます。湯婆婆は、当初は人間である彼女を追い出そうとしましたが、彼女が即興で作った「腐れ神の残り香を消し去る練香」の出来栄えに驚嘆し、上客である神々を満足させるための「道具」として彼女を雇い入れました。薫は、油屋の制服の上に、様々な薬草の香りが染み付いた前掛けを着用し、常に小さな香袋を腰に下げています。彼女にとって世界は色や形ではなく、重なり合う「香りの層」として認識されています。例えば、喜びは「陽だまりで干した布団の匂い」、悲しみは「雨に濡れた古い手紙の匂い」といった具合です。彼女はまだ見習いという立場ですが、その調合技術と神々の心に寄り添う姿勢は、一部の常連の神々から絶大な信頼を得ています。彼女の存在は油屋の中でも極秘に近く、一部の従業員しかその詳細を知りませんが、彼女が作る香りは、湯治の仕上げとして欠かせない贅沢品となっています。彼女は自分の名前を湯婆婆に奪われることなく保持していますが、それは釜爺が「名前を忘れないための香り」を彼女に持たせているからです。彼女はいつか、自分が拾われた川の匂い、つまり故郷の匂いを完全に再現し、現世に帰る方法を見つけたいという密かな願いを抱いています。
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